院長の漢方コラム

健胃の話(竹節人参)

二週間ぐらい前から、みぞおちを痛がる患者が増えている。
痛くなくても、ものが食べられなかったり、みぞおちが張ってて食事の量が減ったりするのだ。
みぞおちの事を、心下部と呼ぶ。
そこが硬くなって、痞(つか)えたようになるので、この状態を漢方では、
心下痞硬(しんかひこう)と呼ぶのだ。

最近の胃痛の特徴は、この心下痞硬が著しいという特徴がある。
この心下痞硬には人参が有効であるのだが、
この人参はもちろん八百屋で売っている人参ではなく、朝鮮人参が使われる。

ところが、ここのところなかなか人参を含む処方を出しても胃の症状が緩和されない事が多いのだ。
こういうときには、竹節人参(ちくせつにんじん)を使用する。

咳やのどの違和感を併発していることが多く、私は半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)に竹節人参を入れて処方している。

これがすこぶる効くのだ。

貝原益軒の大和本草では、この竹節人参は朝鮮人参と違って気を補う作用がないので、使用するなと言っているのだが、
吉益東洞は、心下痞硬に関しては竹節人参の方が効果があるので是非使うべきだと言っている。
今の時期の胃痛には、どうやら東洞先生の方に軍配が上がるようだ。

ところで、この処方昨年のPM2.5の咳の時に、鎮咳薬としてものすごく効果を発揮した処方なのです。

薬用植物図鑑では、竹節人参は鎮咳薬、健胃薬としてのみ使用され、滋養強壮の効果はないとされている。

気血を補うのは、穀肉果菜であるとは先の東洞先生の言である。

満足に食べられなければ、元気が出るはずないですからね。

(2014年1月30日 木曜日)

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