院長の漢方コラム

まくわ瓜(まくわうり)

そろそろ山梨県では道の駅に「真桑瓜(まくわうり)」が露天の店頭に並ぶ。
瓜と言えばキュウリやトウガンヘチマなどはよく知られるが、われわれ令和の人々はまくわうりと言われてもピンと来ない人も多いだろう。
実はマクワウリは弥生時代の遺跡から見つかる程古い時代からあったものらしく、本邦ではむしろキュウリよりも古くから作られている作物らしい。
暑い夏に、「水菓子でもどうですか」
などといいながら串で食べるのに丁度良い大きさに切って出される。
江戸時代から昭和初期くらいまでは果物の事を水菓子と呼んでいたそうで、真桑瓜は夏に涼をとるのには。その上品な甘さとひんやりとした水分が丁度良いバランスで、今の果物は糖度ばかりを追い求め結果甘くなりすぎてしまい、却ってのどが渇く事もあるから、真桑瓜はかえってすごく新鮮に感じられる。

初真桑四には断たん輪に切らん

は芭蕉の句。俳人の松尾芭蕉は真桑瓜が相当好きだったらしく、真桑瓜を題材にした俳句を幾つも読んでいる。とくに此句は初真桑を食べるときの悦びが躍動的に伝わって来る。
小野蘭山によると甜瓜は濃州真桑村の瓜が甘くて上品だったため、その種を毎年東寺あたりで栽培したから真桑瓜とよばれたらしい。またアマウリともいわれそのせいか「甜瓜」とも書かれる。また真桑瓜は蒂を薬用にするのだが、その薬をよく使った奥村良筑という医師が越前産のものでないと効果が無いと言ったらしく、それでか滝沢馬琴の俳諧歳時記にはマクワウリは「越瓜」と書かれている。真桑瓜は俳句の季語としても暑い夏に涼を添える。

ああ真桑食べて楽しい見て楽し。

(2024年7月18日 木曜日)

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