院長の漢方コラム

喉ちくのかぜ

ここのところ 喉が痛くて鼻水が出る という訴えの患者が増えている。

喉は咽とは違つ。読み方は同じ「のど」なのだが喉は舌の付け根(舌根部)より下方のことを言い、咽はそれより上の扁桃や鼻の奥の「のど」のことを言う。
「喉ちくのカゼ」とは、文字通り「喉がちくちく」するのでそういう名前なのだが、昔の漢方家の藤平先生の著書で初めて見かかけて良い名前だなと思ってそれから喉がちくちくするような風邪のことを「喉ちくの風邪」と呼ぶことにしている。

喉ちくのカゼは喉がちくちくしているだけで、あまり熱は無く、多くはさらさらした鼻水とだるさを訴える。
そういう時には「葛根湯」では無く「麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)」を用いるとよい。
ここのところ朝晩急に冷え込むので冷たい空気を吸って喉が冷えてそうなったのだろう。

大きな病院の手術室は実は一年中寒い。
手術する外科医は手術用のガウンを着込み強いライトを頭越しに浴びているのでちょうど良いのだろうが周りのスタッフは堪ったものではない。一年中寒いのでしょっちゅう喉ちくのカゼが流行るのである。熱が出ないタイプのカゼなので感染した者が仕事を休まず仕事に出てくるのも流行させる原因の一つではないかと思う。

冷えが原因のカゼなので消炎鎮痛薬で喉の痛みを除くのは間違いである。
「麻黄附子細辛湯」お試しあれ。

(2014年10月18日 土曜日)

コラム一覧へ戻る